水産加工の仕事は、魚や貝、海藻などの水産物を原料として、干物や冷凍食品、缶詰、練り製品などの加工品を製造する仕事です。
「魚を加工する仕事」と聞くと、それだけでは働き方をイメージしずらい方も多いかと思います。
しかし、水産加工業の働き方は漁師とは大きく異なります。
多くの水産加工会社では工場内で工程ごとに作業を分担しており、原料の荷受けや仕分け、下処理、加工、調理、包装、検品、出荷など、さまざまな仕事があります。
また、未経験から正社員を目指しやすいことも水産加工の特徴です。
一方で、魚特有の臭いや寒さ、立ち仕事など、実際に働いてみないと分かりにくい大変さもあります。
私は実際に水産加工会社で働き、中小企業と大手企業の両方を経験しました。
この記事では、その経験も踏まえて、水産加工の仕事内容や、やってみてきつかったこと、向いている人、メリット・デメリット、漁師との違いまで詳しく解説します。
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水産加工の仕事とは?

水産加工業とは、魚や貝、海藻などの水産物を原料として加工し、消費者が食べやすい商品にして販売する仕事です。
代表的な水産加工品には、以下のようなものがあります。
- 干物
- 冷凍食品
- 缶詰
- かまぼこなどの練り製品
- 佃煮
- 塩蔵品
- 煮干し
- 海藻の乾物
- 明太子・たらこ
- シーフードミックス
生の魚介類は傷みやすいため、そのままでは長距離輸送や長期保存が難しいという問題があります。
そこで、冷凍、乾燥、加熱、塩漬けなどの加工を施すことで、保存性を高めたり、調理しやすくしたりします。
つまり水産加工業は、漁師や養殖業者などが生産した水産物を、消費者が利用しやすい食品へ変える役割を担っています。
水産業の中で水産加工業はどんな位置づけ?
水産業の流れを大まかにすると、
漁師・養殖業者
↓
水産加工業者
↓
市場・スーパー・小売店など
↓
消費者
という流れになります。
漁師や養殖業者が水産物を生産し、それを水産加工会社などが仕入れて加工します。
そして加工された商品が市場やスーパー、飲食店などに流通し、最終的に消費者のもとへ届きます。
もちろん、すべての商品がこの流れになるわけではありませんが、水産加工業は水産業の中で生産者と消費者をつなぐ役割を担っていると考えると分かりやすいでしょう。
私は水産加工の仕事を経験しましたが、実際に現場で働いてみると、水産物がどのように流通していくのかを知る機会が多くあります。
そのため、「水産業には興味があるけれど、いきなり漁師になるのはハードルが高い」という人にとって、水産加工業は一つの入口になりやすい仕事だと感じます。

水産加工の仕事内容と工程

水産加工の仕事内容は会社や製品によって異なります。
ただ、一般的には以下のような工程があります。
- 原料の荷受け・仕分け
- 仕込み
- 下処理・加工
- 調理・味付け
- 冷凍・乾燥などの処理
- 包装
- 検品
- 出荷
すべてを一人で担当するのではなく、工程ごとに担当者を分けている工場も多くあります。
原料の荷受け・仕分け
まずは漁師や養殖業者、卸売業者などから入ってきた水産物を受け入れます。
魚種やサイズ、数量などを確認し、加工する商品に合わせて仕分けします。
水産物は重量がある場合もあるため、ここは比較的体力を使う工程です。
仕込み
加工しやすい状態にするため、原料を準備します。
魚の種類やサイズによって加工方法が異なるため、製品の規格に合わせて原料を選別したり、必要な量に分けたりします。
下処理・加工
魚の頭や内臓、エラなどを取り除いたり、切り身にしたりします。
製品によっては骨を取り除いたり、三枚おろしにしたりすることもあります。
水産加工と聞いて多くの人がイメージする「魚をさばく仕事」は、この工程に当たります。
ただし、現在は機械化されている工場も多く、すべてを職人が包丁一本で処理するわけではありません。
調理・味付け
商品に応じて、
- 煮る
- 焼く
- 揚げる
- 味付けする
- 塩漬けする
- 乾燥させる
などの処理を行います。
かまぼこなどの練り製品や、佃煮、缶詰などでは、それぞれ異なる製造工程があります。
包装
完成した商品を袋やトレー、缶などに詰めます。
工場によってはベルトコンベアを使ったライン作業が中心になることもあります。
検品
包装された商品に異物が入っていないか、規格どおりになっているかなどを確認します。
食品を扱う仕事なので、検品は非常に重要な工程です。
出荷
検品が終わった商品を梱包し、取引先などへ出荷します。
商品の種類や数量、送り先を間違えないように確認する必要があります。
水産加工の仕事はきつい?実際に働いて感じたこと

水産加工の仕事には、確かにきつい部分があります。
代表的なのは、
- 魚の臭い
- 寒さ
- 立ち仕事
- 重量物
- 単純作業
- 繁忙期
- 厳しい衛生管理
- 人間関係
などです。
ただし、どの部分をきついと感じるかは人によって違います。
私自身が中小企業と大手企業の両方で働いた経験からすると、魚の臭いや体力的な負担以上に、意外と大きかったのが人間関係でした。
魚の臭いが苦手だときつい
水産加工では魚介類を扱うため、独特の臭いがあります。
魚を扱う工程では生臭さを感じることもあり、この臭いが苦手な人にとっては大きなストレスになります。
実際、私が働いていた職場でも、魚の臭いがきつくて辞めていく人がいました。
魚が好きな人なら問題にならないこともありますが、「魚を食べるのは好きだけど、生魚の臭いは苦手」という人は注意したほうがいいでしょう。
寒さがきつい
水産物は鮮度管理が重要なので、加工場によっては室温が低く設定されています。
特に原料を扱う工程では、冷たい水や冷蔵された魚を扱うこともあります。
冬場はもちろん、夏でも「工場の中は涼しい」という環境になる場合があります。
暑がりの人には快適でも、寒さが苦手な人にはつらい仕事になるでしょう。
立ち仕事と重量物がある
水産加工は工場勤務なので、基本的に立ち仕事です。
また、原料の魚や加工品を運ぶ工程では、ある程度の重量物を持つこともあります。
すべての工程が重労働というわけではありませんが、健康である程度の体力があるほうが働きやすい仕事です。
単純作業の繰り返しがある
工程によっては、毎日同じ作業を繰り返します。
例えば、
「魚を並べる」
「決められたサイズに切る」
「商品をパックに詰める」
といった作業です。
一度覚えてしまえば仕事自体は難しくありません。
一方で、変化の多い仕事が好きな人には、単調に感じる可能性があります。
繁忙期は忙しくなる
水産加工品の種類や会社によって異なりますが、季節によって原料の入荷量や商品の需要が変化します。
そのため、繁忙期には生産量が増え、残業が増えることもあります。
逆に、閑散期には仕事量が落ち着くこともあります。
つまり、年間を通して常に同じ忙しさというわけではありません。
衛生管理が厳しい
食品を扱う仕事なので、衛生管理は非常に重要です。
作業着、帽子、マスク、手袋などを着用し、手洗いや消毒などのルールを守って作業します。
工場によっては、異物混入を防ぐために細かいルールが決められています。
食品を安全に消費者へ届けるために必要なことなので、衛生管理を面倒に感じる人にはストレスになるかもしれません。
水産加工で一番大変なのは「人間関係」

水産加工の仕事について調べると、「魚の臭いがきつい」「寒い」「立ち仕事が大変」といった話が多く出てきます。
もちろん、これらも水産加工特有の大変さです。
しかし、私自身が中小企業と大手企業の両方で働いて感じたのは、一番大変なのは人間関係です。
特に中小企業では、元漁師など、より一次産業の現場に近い経験を持つ人と一緒に働くこともあります。
現場によって雰囲気はかなり違いますし、最初は怖く感じる人がいることもあります。
ただ、そこで重要なのは、最初から無理に仲良くしようとすることではありません。
私の場合は、
目の前の仕事を全力でやる。
↓
分からないことは自分から聞く。
↓
教えてもらったことを覚える。
↓
仕事で少しずつ認めてもらう。
ということを意識していました。
相手がこわもてに見えても、仕事を覚えるためには自分から聞きに行く。
そうして仕事をきちんとやっていると、少しずつ認めてくれる人も増えていきます。
最初は馴染めなくても、仕事を通じて関係が変わっていくことはあります。
もちろん、すべての職場が同じわけではありません。
ただ、水産加工の仕事では、技術や体力だけでなく、現場の人と協力して仕事を進める力も重要だと感じました。
水産加工は中小企業と大手企業で違う?
私は中小企業と大手企業の両方を経験しましたが、同じ水産加工でも職場の雰囲気や仕事の進め方には違いがあります。
中小企業は現場との距離が近い
中小企業では、一人ひとりの担当する仕事の範囲が広くなることがあります。
買い先に軽トラで、原料を取りに行ったり、卸先とやり取りしたり。
そのため、水産業の現場感を身につけやすいというメリットがあります。
一方、人間関係や職場の雰囲気が仕事のしやすさに影響しやすい面もあります。
大手企業は分業・機械化が進んでいる
大手企業では工程が細かく分けられ、機械化やマニュアル化が進んでいるケースがあります。
一つひとつの仕事を覚えやすい反面、担当する工程以外の仕事を経験しにくいこともあります。
どちらが良いとは一概に言えません。
現場を幅広く経験したいなら中小企業、仕組みが整った環境で働きたいなら大手企業という考え方もできます。
ただし、最終的には会社ごとの差が大きいため、求人票だけで判断せず、面接などで仕事内容や職場環境を確認することをおすすめします。
水産加工の仕事のメリット

ここまできつい部分を紹介してきましたが、水産加工にはメリットもあります。
未経験から始めやすい
水産加工の仕事は、特別な資格がなくても応募できる求人があります。
工程ごとに作業が分かれており、仕事をしながら覚えていける職場もあります。
そのため、水産業界で働いた経験がない人でも挑戦しやすい仕事です。
サラリーマンに近い働き方ができる
漁師とは違い、水産加工会社の社員として働く場合は、基本的に決められた勤務時間に出社して仕事をします。
例えば、
8:00始業
↓
休憩
↓
12:00昼休憩
↓
午後の作業
↓
17:00退社
といった勤務形態です。
もちろん会社によって勤務時間や残業、休日は異なり繁忙期は完全週休2日ではなく半日出社、ざんぎょうもありますが、
「水産業には興味があるけれど、漁師のような働き方は難しい」という人にとって選択肢になりやすいでしょう。
有給休暇など会社員としての制度を利用できる
正社員として雇用されれば、会社の制度に応じて有給休暇などを利用できます。
「水産業=自営業・漁師」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、水産加工会社に就職すれば一般的な会社員として働くことができます。
水産業界全体を知りやすい
水産加工会社では、さまざまな水産物を扱います。
漁師のように「自分で魚を獲る」仕事ではありませんが、原料がどこから来て、どのように加工され、どこへ販売されていくのかを見ることができます。
そのため、水産業界そのものに興味がある人にとっては、業界を知る入り口としても面白い仕事です。
水産加工の仕事のデメリット

一方で、注意しておきたいデメリットもあります。
給与は高いとは限らない
水産加工の現場作業員は、会社や地域によって異なりますが、必ずしも高収入を狙いやすい仕事ではありません。
特に単純なライン作業だけを担当している場合、昇給幅が限られるケースもあります。
そのため、長く働くのであれば、一工員として同じ仕事を続けるだけではなく、班長や工場長などの管理職を目指すことも重要です。
作業員として終わるだけでは専門的なスキルが身につきにくい
工程が機械化され、作業が細分化されている工場では、決められた作業だけを繰り返すことになります。
そのため、「この仕事を何年も続ければ、他社でも通用する専門スキルが身につく」とは限りません。
ただし、水産物の種類や特性、加工方法、衛生管理、生産管理などの知識を身につければ、仕事の幅を広げられます。
閑散期は収入が伸びにくいこともある
水産加工は季節によって原料の入荷量や仕事量が変わる場合があります。
繁忙期には残業によって収入を増やせる一方、閑散期には残業が少なくなることもあります。
固定給だけでなく、残業や賞与、昇給制度なども含めて求人を見ることが大切です。
水産加工の仕事に向いている人

ここまでの内容を踏まえると、水産加工は以下のような人に向いています。
コツコツ作業するのが得意な人
同じ作業を繰り返す工程があるため、集中してコツコツ仕事を続けられる人は向いています。
体力にある程度自信がある人
立ち仕事や重量物を扱う工程もあるため、最低限の体力は必要です。
魚や水産物が好きな人
魚の臭いや水産物を扱うことに抵抗が少ない人のほうが働きやすいでしょう。
衛生管理をきちんと守れる人
食品を扱うため、手洗いや消毒、服装などのルールを守ることが重要です。
チームで仕事ができる人
水産加工は一人だけで完結する仕事ではありません。
前工程から原料を受け取り、次の工程へ商品を渡すため、周囲と連携する必要があります。
そのため、自分の仕事だけ終わればいいという考え方より、周囲と協力して仕事を進められる人のほうが向いています。
水産業に興味があるけれど漁師になる覚悟まではない人
これは個人的には水産加工業の大きな魅力だと思っています。
漁師は自由度が高い一方で、天候に左右され、早朝から海に出るなど、かなり覚悟が必要な仕事です。
水産加工なら、会社員として水産業界に関わることができます。
「水産業には興味がある。でも、いきなり漁師はハードルが高い」
という人には、水産加工業は比較的入りやすい選択肢です。
水産加工の仕事と漁師はどちらがおすすめ?

水産加工と漁師は、同じ水産業でも働き方が大きく異なります。
| 水産加工 | 漁師 | |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 会社員が中心 | 会社員or個人事業主など |
| 勤務時間 | 比較的決まっている | 天候・漁によって変動 |
| 収入 | 比較的安定 | 漁獲量などで変動 |
| 体力負担 | ある | 大きい |
| 危険性 | 工場による | 海上作業の危険がある |
| 未経験からの入りやすさ | 比較的入りやすい | 覚悟・経験が必要 |
| 自由度 | 会社のルールによる | 高い |
| キャリア | 班長・工場長など | 独立・養殖など |
どちらが優れているという話ではありません。
安定した働き方を重視するなら水産加工、自由度や自分の腕で稼ぐことを重視するなら漁師という考え方もできます。
私の祖父は自分の船を持つ漁師でした。
漁師は海が時化れば漁に出られず、別の日に出ることになります。朝も非常に早く、私の祖父の場合は午前2時頃から仕事をしていました。
収入も安定しているとは言えず、漁獲量や腕によって収入に大きな差が出る仕事です。
一方で、会社員とは違った自由があります。
自分の判断で仕事をする部分が大きく、漁師として稼いだ資金を元手に海苔やエビなどの養殖を始める人もいました。
牡蠣小屋などを副業として営むケースもあります。
つまり、漁師には漁師の、水産加工には水産加工のメリットがあります。
水産加工で働くなら「一工員で終わらない」ことも大切

水産加工の仕事を長く続けるのであれば、個人的には**「ただ同じ作業を繰り返すだけ」で終わらないことが重要**だと思います。
最初は一つの工程を覚えるところから始めればいいでしょう。
しかし、仕事に慣れてきたら、
- 他の工程を覚える
- 水産物の商品知識を身につける
- 加工方法を覚える
- 品質管理を学ぶ
- 生産管理を学ぶ
- 後輩を指導する
- 班長を目指す
- 工場長を目指す
といったように、仕事の範囲を広げていくことをおすすめします。
特にチームで作業する水産加工工場では、経験を積んだ人が班長や管理職へ昇格するケースがあります。
管理する側に回れば、給与面だけでなく、将来的に別の仕事へ転職するときにもアピールできる経験が増えます。
水産加工業界で長く働くにしても、別のキャリアへ進むにしても、現場作業だけではなく「人・品質・生産を管理できる人材」を目指すことは大きな武器になります。
水産加工の仕事はきついが、水産業界に入る間口としてはおすすめ

水産加工の仕事には、魚の臭い、寒さ、立ち仕事、重量物、単純作業、繁忙期、人間関係など、確かに大変な部分があります。
特に魚の臭いが合わずに辞める人や、体力的な負担から辞める人もいます。
私自身の経験では、最も難しかったのは人間関係でした。
しかし、それ以上に水産加工業には、
- 未経験から始めやすい
- 会社員として働ける
- 勤務時間が比較的決まっている
- 水産業界に関われる
- 水産業全体の流れを学びやすい
- 班長や工場長などを目指せる
といったメリットがあります。
「水産業には興味があるけれど、漁師になるのはハードルが高い」という人にとっては、水産加工業はバランスの取れた選択肢だと思います。
ただし、水産加工と一口に言っても、会社によって仕事内容や職場環境は大きく異なります。
魚をさばく仕事なのか、冷凍食品を作る仕事なのか、包装や検品が中心なのか。
勤務時間はどうなのか。
残業はどれくらいあるのか。
重量物を扱うのか。
職場の雰囲気はどうなのか。
こうした点は特に面接や職場見学で確認したうえで、自分に合った職場を選ぶことが大切です。
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